豪華な会場のセットデザインが圧巻。二千二十六年の卒業パーティという設定が未来的で美しい。アンがウサギの仮面をつけて現れるシーンは、まるでシンデレラのようでありながら、どこか危険な香りがする。トムとの電話でのやり取りから、彼が彼女の正体を知りながらゲームを楽しんでいる様子が透けて見え、背筋が凍るようなスリルがある。
トムという人物の描かれ方が絶妙すぎる。スーツ姿で窓辺に立つ彼の横顔からは、計算し尽くした支配者の匂いがする。アンが必死に逃げようとしても、彼の掌の上で踊らされているようだ。元彼の父と、してしまったというタブーを犯した代償として、彼が何を求めているのか。その不気味な微笑みが脳裏から離れない。
黄色いドレスの姉と、濡れた白いドレスのアン。この対比が物語の核心を突いている。姉の余裕ある態度と、アンの動揺が鮮明に対照的で、家庭内の複雑な力学を感じさせる。階段を下りる姉の足音一つで、アンが震え上がる様子は、言葉以上の圧力がある。この姉妹関係が今後のプロットにどう影響するのか予想がつかない。
スマホ越しに見ているのに、車内の湿った空気や会場の喧騒が伝わってくるような臨場感。アンが仮面をつけて歩くシーンでの周囲の視線が、まるで自分がその場にいるような錯覚を起こさせる。元彼の父と、してしまったという禁断の恋を描くにあたり、この密着感のある映像表現は最高に合っている。夜中に一人で見るには危険な作品。
トムがアンの学生証をじっと見つめるシーンが全ての始まり。単なる拾い物ではなく、彼が最初から狙っていたのか、それとも偶然の巡り合わせなのか。アン・ラーソンという名前が呼ばれた瞬間の緊張感がたまらない。大学の身分証明書という日常的な小道具が、ここでは運命を変える重要なアイテムとして機能しているのが素晴らしい。