ネットショートアプリで観た中で最も背筋が凍るシーンかもしれない。葬儀という厳粛な場で、涙腺を刺激する薬を使ってまで悲しみを演出するなんて。『幸せだったはずの家族』というタイトルが皮肉に響く。眼鏡をかけた男性の困惑した表情と、薬を差す女性の冷たい目が対照的で、この家族に隠された秘密が深すぎてゾッとする。
白い菊の花と黒い服のコントラストが美しいが、その裏にある人間関係がドロドロすぎる。『幸せだったはずの家族』の登場人物たちは、死者を悼むふりをして実は自分の利益を考えている。特に金ボタンをつけた女性は、涙を拭う仕草さえも計算された演技に見えて、観ているこちらまで不安になる。こんな家族関係、誰も幸せになれないだろう。
葬儀の場で目薬を差して涙を誘うなんて、ドラマの脚本でも考えつかない発想だ。『幸せだったはずの家族』は、人間の本性をこれ以上ないほど赤裸々に描いている。周囲が静かに黙祷する中、彼女たちだけが小声で会話し、薬を使って感情をコントロールしている。この不自然さが逆にリアルで、家族という名の仮面の下に潜む本音が見えた気がする。
写真の中の女性は穏やかに微笑んでいるが、その前で行われている茶番劇が悲しすぎる。『幸せだったはずの家族』という作品は、死別という悲劇を舞台に、生きている者たちの醜い争いを描く。黒いスーツを着た男性が困惑する様子や、女性たちが互いに牽制し合う空気感が、言葉以上に多くのことを語っている。この静かな狂気がたまらない。
このシーンの恐怖は、悲しみが完全に演出されている点にある。『幸せだったはずの家族』の登場人物たちは、葬儀という儀式を利用して自分の立場を確保しようとしている。薬を使って涙を流す女性は、まるで舞台女優のように振る舞い、その冷徹さが周囲の空気を凍りつかせる。観ていて胸が苦しくなるが、目が離せない不気味な魅力がある。