前半の荒れた夜から一転、後半の明るいリビングで繰り広げられるケーキを食べるシーンがあまりにも対照的で胸が痛みます。ベレー帽の彼女が無邪気にロールケーキを頬張る姿は、彼女が何も知らないことの象徴のように見えました。隣で微笑むストライプの彼の本心が読めず、始まりは君のワナという展開を予感させる伏線が随所に散りばめられています。この平和がいつ崩れるのかとハラハラしながら見てしまいました。
キャラクター同士の視線のやり取りが非常に印象的でした。バーで絡み合う二人の男性の視線には依存と拒絶が入り混じっており、後半の部屋では眼鏡の彼が彼女を見る目にどこか計算高い冷たさを感じます。彼女が彼を追いかけて廊下に出るシーンでの表情の変化は見事で、始まりは君のワナという物語の核心に触れた瞬間の衝撃が伝わってきました。言葉にならない心理戦が素晴らしい作品です。
映像美が際立つ作品でした。前半は青と紫のネオンライトで彩られた冷たく危うい世界、後半は温かみのある照明とパステルカラーのスイーツが並ぶ安らかな世界。この色彩の対比だけで、登場人物たちが置かれている状況の違いを視覚的に理解させられます。特に彼女がオレンジジュースを飲むシーンの明るさが、始まりは君のワナという不穏なテーマと衝突して、より一層の緊張感を生み出していました。
派手なアクションはないのに、静かな会話や仕草だけでこれほど緊迫感を出せるのは素晴らしいです。特に後半、彼女が一人で廊下を歩くシーンや、彼が電話をするシーンでの沈黙の重みがたまりません。始まりは君のワナというタイトル通り、日常のふりをした非日常がじわじわと迫ってくる恐怖があります。眼鏡をかけた彼の無表情な顔が、実は最も恐ろしい仮面なのではないかと勘ぐってしまいます。
ベレー帽の彼女の純粋な笑顔が痛々しいほどです。彼が持ってきたケーキを喜んで食べる姿は、彼女がどれだけこの関係を大切に思っているかを物語っています。一方で、ストライプの彼の態度はどこか事務的で、電話をかける姿からは彼女を駒として扱っている冷徹さが透けて見えます。始まりは君のワナという悲劇的な結末を予感させる二人の距離感が、見ていて切なくなりました。